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弱冠暗くなった室内の事は気にせずに、一枝は感心したように頷くと、少女の元に向かう。
「お、おい! あぶな」
勇樹が制止する前に、一枝は鋭い鞭の攻撃を最小限のフットワークだけで回避し、少女の懐に潜り込み、『グリンガム』を持つ手を抑えた。すると、鞭はまるで飼い主に咎められた動物のように、その破壊的な運動を終えたのだ。一枝は左手に持った資料と少女の顔を見比べて、
「うん、原朱実さん。貴女は『グリンガム』があっているみたい。操作は大変だけど、やってみない?」
「え? あ、は、はい」
何でもなさそうに告げる。
これには誠二も驚いたようで、両手に剣を持ったまま一枝を凝視していた。
(……あの若さで教官になったのは伊達じゃない、って事か)
その点に関してだけは、安心してもよさそうだ。
(もっとも、現時点の自分達よりも優れているだけで、他の教官よりも優れているのかどうかはわからんがな)
「……まさか最初から『グリンガム』が使えるなんて誰も思わないし……怒られちゃうな……修理費、給料から天引きされちゃう」
一枝はがっくりと肩を落としつつ、勇樹に眼を向ける。
「で、勇樹君は決めた?」
「えっと……」
何が良いのだろうか? インヴィテイションにはチームプレーが求められる事くらいは、勇樹も知っている。
誠二が剣を使い、君香が素手という事は、二人は接近戦がメインという事だ。そして朱実の鞭は中距離、といった所か。
なら、遠距離の銃、だろうか?
そう考え、勇樹は手頃な銃を手に取った。
「撃っても良いですか?」
「どうぞ」
数十メートル先の的目掛けて銃弾をたて続けに放つ。
一発、二発、三発。
引き金を引くのと同時に、体が少しだけだるくなるのを感じる。
自身の体内から放たれている電磁波を『中和線』に変えているため……と教官が言っていた事を勇樹は今更ながらに思い出したが、寝ていたので詳しくはわからない。さらに言えば、勇樹が着ているジャケットやヘッドギアも、体内で発生している電磁波を『中和線』に変換、増幅する事で、体外からの電磁波を相殺し、身を守る仕組みになっているのだが……これも寝ていた勇樹は知らないのだろう。
銃弾は全て的には当ったが……一発だけ、ど真ん中から外れた。
だが、銃器をろくに扱った事もないにしては上出来だ。
「……君は、こっちの方が良いかも」
そう言って一枝が差し出したのは、やはり銃。だが今勇樹が使ったのよりも、銃身が太く、長い。しかも、やや重い。
教官から出た初めてのアドバイスだ。それをむげにするのもどうだろうか。そう考え、勇樹は渡された銃を構え、引き金を三度引く。
弾丸は、全てど真ん中に当った。それに扱い易い気がする。
「……どう?」
「さっきのより重いのに、扱い易いですね」
どうしてだろうと思いつつも、勇樹はさらに何度か撃ってみる。
だから、何故一枝がこの銃器を勧めたのかまでは、勇樹は深く考えなかった。
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