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咄嗟にマントを翻し、ヘッドギアを通じて浮力を調整。
(間に合え! 浮け!)
香が眼をつむるが、ドン、という音は聞こえてこない。
一枝も両手を差し出し、勇樹を受け止めようとしていたが、その両腕に彼はいない。
「あ、あ、危なかった」
冷や汗をかきつつ、勇樹は地上約一メートルの地点で背中を地面に向けて浮いていた。
十秒程して、一枝の構えた両腕に勇樹は落下。
「す、すいません」
顔を赤くして一枝の腕から降りるが、当の一枝は眼を軽く見張っていた。
(……普通に浮くのはともかく、咄嗟に浮くってのは、結構難しいんだけどね)
コントロールの点が平均点と出ていたが、今の対応を見る限り、もっと上の点が出ていても良さそうなのだが。
その考えは振り払い、一枝は指示を出す。
「ええっと、じゃあ、次は朱実さんにやって貰おうか」
「そんなグズなんかにやらせる暇があったら、僕にやらせろ」
「……誠二、あんた、今、何て言った?」
「……あの……私は」
冷や汗を拭く勇樹はそれを完全に無視しつつ、
(……難しい……クソッ!)
親父は、こういった基礎の動作を、文字通り当たり前にこなしていたのだろう。
(……ムカツク! あんな借金親父に負けてたまるか!)
次に誰がマントとブーツをつけるか揉めている間に、勇樹はひっそりと一人でふらふらと空に浮く。
そして、今は亡き父親の顔を思い浮かべ、
(あそこに、親父の顔がある)
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