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香を援護するために、引き金を引くか。
自分が確実に逃げるために、香を見殺しにするかを。
その迷いは、共鳴体が香に攻撃するのに、充分な時間を与えてしまった。勇樹の網膜は、ゆっくりと、共鳴体の腕が振り下ろされるのを映し出していた。硬直し、動けぬ香の表情も。
刹那、その腕が、共鳴体の背後から伸びた鞭に絡め取られる。
それまでのスローモーションの光景が嘘のような早さで、幾筋もの鞭は共鳴体を拘束。床が抉れ、粉塵が巻き上がるほどの凄まじい打撃を繰り出す。
破片が飛び散る中、『グリンガム』を持った白髪の女性が床を蹴る。
誠二と戦っていた共鳴体に一足で接近した一枝は、共鳴体がこちらを振り向いた時には攻撃を仕掛けていた。八方向からの生物的な動きを、共鳴体は避ける間も無かった。共鳴体が破壊された際に生じる破砕音すら、『グリンガム』の連撃に掻き消されている。
さらにその後、数体の共鳴体が出現しようとしたが、出現とほぼ同時に『グリンガム』がその空間目掛けて動き、敵を完膚なきまでに破壊していく。
一分後。
〔レベル一五、クリアです〕
シュミレーションルームに響いた、機械的な声。
一枝は一息つくと、香に、勇樹に、誠二に顔を向け、
「どうして、こうなったのか、誰か、自発的に、教えてくれない?」
一言一言音節を区切り、にっこり、笑った。『グリンガム』を構える一枝の左頬が、微妙にヒクヒクと引きつっている。
背後に佇む朱実が、粉々になっている床を見つめている。
青い顔で、彼女は一枝とは対照的な笑みを見せていた。
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