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「ほら勇樹。お父さんにいってらっしゃい、って」
母―八神優子―の声に導かれ、勇樹と呼ばれた少年はトコトコと玄関まで走ってくる。その足取りは見ている方がハラハラする。
「お父さん! 今日も悪い人をやっつけてくるの?」
「ああ。お父さんは、今日も悪い人を懲らしめて、人助けをしてくるんだ!」
その答えに満足したのか、満面の笑みを顔に浮かべ、『いってらっしゃい!』、と元気一杯に手を振る勇樹。
それに父は親指をグッと立てて答える。
勇樹にとって、父親は誇りだ、ヒーローだ。
詳しい事はわからないが、悪者を懲らしめている正義の味方、と勇樹は解釈していた。
玄関の扉が閉じられる。
「ねえねえお母さん、お父さん、今日はいつ帰って来るのかな?」
「夕ご飯前には帰ってくるんじゃない?」
母はあらかじめ考えていたと思われる言葉を言うと、台所に向かい、食器の片付けを始める。
いつもと変わらない、幸せな光景。
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